「感受性豊か」という言葉がありますが、まだまだ無垢な3歳児の感受性は「豊かというより、やわらかだなぁ」と感じたことがありました。
毎日登園する際に通る道。川沿いの遊休地の草刈りが行われました。
朝、草刈りがちょうど始まった頃に通りかかり「草刈りしているよ。草のいい匂いがするね」とぐり君に話しかけながら通りました。
帰り道。すっかり草刈りも終わり、こざっぱりしたのを横目に
「草刈り、終わっているね。あ、お花もなくなっちゃたね。残念」と言いながら通り過ぎました。
川で釣りをしている人を見ながら橋を渡っていると…橋の真ん中で、突然ぐり君が大きな声で号泣しました。
「うわ~~ん!!! ★✗◯※・◎※✗△!!!」
「え? 何? どうしたの??」
戸惑いながらも、橋の途中でベビーカーを止めては通行の邪魔になるので、橋を渡りきってからぐり君の前に回り込み、顔を見ながら話しかけました。
「泣きながら話すと、何を言ってるかわからないよ。落ち着いて、泣かないで話してごらん?」
背中をなで、抱きしめ、落ち着かせようとしますが、泣き止むことができないようです。
「お◯▲✗※◎・■✗△※!◯✗なの!」
お、と最後の、なの しかわからない…。
「もう一回言って」と、何度尋ねても、聞き取れない…。
「お」と「なの」から推測して、質問をしてみる。
魚釣りを見て、自分もしたくなったのかな? この間夕方の川遊びはダメと言われたから、したいけれどダメだろうと思って悲しくなったのかな?
「お魚が、欲しかったの?」
「✗※◎・■※✗※△、ちやう”」
違うのか?
じゃあ、100メートルほど前に、ぐり君に「あいすたべよっか」と言われ「バナナが痛みそうだから、アイスじゃなくバナナを食べて」と返したから? アイスが食べたかったの?
「おやつ、バナナじゃなくアイスが食べたかったの?」
「※◯◎・■✗△※※、ちやう”」
ええー…じゃあ、何?
酒屋さんでお菓子を買いたかった? 違うルートを通って帰ったから?
(たまに、それが原因でわざわざ引き返す羽目になる)
「お菓子? 酒屋さんでお菓子を買いたかったの?」
「ちやう”の! ※✗●△※」
ううーーーん、全然わからない…。
お。お、頭に「お」が付く言葉…。
「もしかして、お花?」
「ん”、◯・※■◎、おはなが※✗●△※、。」
「お花が、なくなっちゃったのが悲しかったの?」
「ん”」
そうか~。遊休地には、ピンクのクローバーの花や、オレンジのキク科の花が咲いていて、時々、道から手を伸ばして花を摘んでいました。
いつも見ていた花が、草刈りで刈り取られてしまったのが悲しかったそうです。
ぐり君が泣き始めたのは、遊休地を過ぎて50メートル程の距離。その間、ベビーカーを押している私は気づきませんでしたが、その間に悲しさがこみ上げ我慢しきれなくなったのでしょう。
「今度、他のお花を探しに行こうか」
「あ”のおばなが、よがっだの」
涙声で濁点交じりの言葉。まだグズグズ泣いていますが、何の話かわかったので、ぐり君の言葉が聞き取れるようになりました。
「黄色い色のお花が好きだったの?」
「ん”」
「そうか、そうか~」
困ったな。あの花は、他で雑草として生えているのを見たことないな。
「ぐり君、聞いて。お花は咲くと、冬には枯れちゃうの。お花が咲いたら、種になるの。そのあとお花は枯れちゃうけれど、また春になると種から芽が出て、お花が咲くんだよ。また来年には咲くよ。そうしたら、またお花を摘もう」
「いまがいいのぉー!」
でた。最近のお気に入りのフレーズ「いまがいいの」。
「困ったな~」といいながら、ベビーカーを押しました。
「黄色いお花、他には咲いてないんだよ」
何やら、まだグズグズいってます。
「あ、でも、ベランダに紫のお花が咲いていたよ」
ちょうどホテイアオイの花が咲いたのを思い出し、教えました。
「紫のお花、きれいだったよ。帰って見る?」
と聞くと、
今までのぐずりは何だったんだ、と思うほど、ころっと機嫌が直りました。
ぐり君が、泣いてしまうほど好きだった花。
来年の初夏、またあの場所に花が咲いてくれるといいな。