片隅でひっそりと

~共働き家庭の 仕事・家事・育児~

高齢出産:NIPT検査を受ける《後編》

 

 

気持ちが揺らぐ

C病院でNIPT検査を受ける直前に、B病院に妊婦健診に行ったのですが、その際に担当してくれた先生が、とても良い先生でした。

 

妊娠初期の頃は検診で会社を休みたくはなかったので土曜日に通っていましたが、土曜日は当番制のために「担当の先生」というものはなく、その時々で色々な先生が診断してくれていました。 この時は、近隣の個人病院から派遣されて来ている先生でした。

 

エコーを終えて先生からの経過説明は、旦那さんも同席しました。

カルテにNIPTの検査を受けることが書かれていたため、先生から「NIPT検査の結果が陽性だった場合にどうするか、ご夫婦で話し合われていますか?」と聞かれました。

旦那さんは意思が固まっていてすぐに先生に返答しましたが、私は「諦めた方がいいとは思っています。そう夫婦でも話し合っていました。…でも、陽性だった際にもそう決断ができるかは、その時になってみないと分かりません…。」と、揺らいでいる気持ちをはじめて吐露しました。

旦那さんは内心「え!?」と思ったかもしれませんが、泣きながら話す私の手を静かに握ってくれました。

 

当初は「陽性だったら諦める」と考えていたけれど、そう簡単に割り切れるはずなんてないんですよね…。

毎日毎日、「初期流産してしまわないか」「ちゃんと細胞分裂を繰り返して育っていっているのか」と、心配して四六時中おなかの赤ちゃんのことを考え続けているのだから。

 

NIPT検査を受けると決めても、もし結果が陽性だった場合にどうするかの決意が出来ておらずグラグラ状態だった私の気持ちに先生は寄り添ってくれ、「万一ダウン症だったとしても諦めなくちゃいけないわけじゃない。金澤翔子さんは知っている?ダウン症だけどちゃんと自立して生活している。軽ければ、そうやって自活することも可能なんだよ。」と教えてくれました。

その上で、「陽性だった場合にどうするかは、夫婦で話し合って決めることだけど、一番大切なのはお母さんの意思だから。今この瞬間もお腹の中で育てているのはお母さんなので、お父さんは自分の気持ちより、お母さんの気持ちを尊重してあげてください」と夫に言ってくれました。

その言葉で、ものすごく気が楽になりました。

 検査を受けると決めたときに「陽性だったら諦める」というのが夫婦で出した結論だったので、それは反故にしてはいけない、旦那さんの気持ちに変わりがないならその気持ちに自分も同調しないといけない、と思っていました。でも、先生の言葉のおかげで、どうしても心の整理がつかなければ「やっぱり諦められない」と言ってもいいんだな、と。

 

 

NIPT検査の当日

C病院では、検査の前にカウンセリングがありました。

このカウンセリングは、夫婦2人での参加が原則だったので、二人で病院に。

 

先生から、この検査で分かること・分からないこと・陰性と陽性の確率など、たくさんの説明をしてもらい、質問にも丁寧に答えてもらいました。

NIPTではたった3つの遺伝子異常しかわかりません。心臓などの形成段階での異常や、発達障害の有無などはもちろん検査範囲外という説明を聞いて、旦那さんは「え、他の異常はこの検査で分からないの?」といった感じでしたが、私は日々心配でネットで情報収集していたので「当たり前でしょ」ぐらいの感覚。

心配事が増えてアップアップしている旦那さんに「親として腹をくくれ」と発破をかけながら、私が考えていたのは「21トリソミーだった場合にどうするかはまだ判断できないけれど、13トリソミー・18トリソミーだった場合は自然に任せよう」でした。

「ああ、こうしてお母さんは強くたくましくなっていくんだな」と実感。

 

「高額な検査だけれど万能ではない。そのことを知った上でNIPT検査をするかどうか、もう一度話し合ってください。NIPTを受けた後でも、やはり結果は知りたくない・聞かないということも出来ます」と、カウンセリングのあと1時間、決断するための時間を設けていただきました。

C病院でカウンセリングをしてくれた先生は、「この先、大変な思いをしてずっと子どもを育てていくのはお父さんとお母さんです。どんな選択をしても、それは間違いではありません」と、言葉を添えてくれました。

 

B病院とC病院、それぞれの先生に、混沌としている自分の気持ちを肯定してもらったように感じました。

 

1時間、病院の中庭やカフェを2人でウロウロ。

「検査を受ける」という意思は2人もかわらなかったので、意思確認をしあっただけで、特に話し合いの必要はありませんでした。

陽性だったとしても自分は諦められないかもという話は改めて旦那さんに伝えましたが、検査結果が出ていない今はこれ以上仮定の話をしても結論は出せずに辛いだけなので、深く話すことはしませんでした。

 

 

1時間して、再びカウンセリング室へ戻り、検査を受ける旨を伝えました。

もし陽性だった場合は羊水検査に進むことになるけれど、その場合の費用も含まれているといわれ、少し安心しました。

(ただし、NIPTの検査結果が陰性なのに、さらに確実性を期して羊水検査を望む場合は、別途費用だという話でした。この陽性だった場合の羊水検査の費用については、病院ごとに対応が違うのかもしれません)

 

そのあと採血室に移動。たくさん血を抜かれました。

母体の血の中に、胎児の染色体も流れているので、血液の中からその断片を集めて検査するそうです。

それを聞いて、「自分の血液の中に、他者の染色体が!?」と驚愕し、エイリアンぽい…と、ちょっと引きました。

 

 

検査結果を聞きにいく

検査は海外でおこなうため検査結果は2週間後と聞いていましたが、10日ほどで連絡が来ました。

二人で有給をとって、車で病院まで。

30分ほどの道のりでしたが、車内はシーンとしており、旦那さんが私に話しかけたいけど話しかけられない…という雰囲気をかもし出していましたが、とてもじゃないけれど雑談する気になれず。

気まずい沈黙が続く中、ずっとエコー写真を見ながら陰性でありますようにと祈り続けていました。

 

カウンセリングを受けた部屋で、結果を聞きました。

 結果は、陰性でした。

ほっとして「これでもう安心!」という感じの旦那さんに釘を刺し、「この先、エコーなどで他の問題が見つかる可能性もある。でも、そうなっても障害を受け入れて諦めることはしない」と宣言しました。

 

 

もし、21トリソミーだった場合、自分がどういう決断をしたかは分かりません。

その決断を迫られることなく済んだことに感謝しています。